ありがとう…仮面ライダー鎧武…。
45話46話、そして47話は何周もしました、最高だった。良くも悪くも虚淵さんらしく平成ライダーらしい作品だったと思う。
露悪的で勢い任せで、それでいて心に強く訴えかけ突き刺さる作品だったなと。
正直ナックルになってから正統派ヒーロー過ぎて、なんでこの人序盤でえ!?バナナ!?バナ、バナナ!?してたんだろうとも思ったり。
戦いは二人の男の一騎打ちへ
圧倒的な強さを見せつける駆紋戒斗/ロード・バロン。戦極凌馬のみならず城乃内と鳳蓮を圧倒、そんな中ザックは戒斗に着くことを表明する。しかしやはりというべきかザックの目的は戒斗を止めることだった。
作中でも自分を味方だと思っている戒斗を裏切ることに負い目に感じていた上に、作戦とはいえ城乃内と鳳蓮を見捨てる真似をする羽目になったのは心が痛んだろうに…。
戒斗も裏切ったザックを「強くなったな」と称えた辺り本当に認めていたのだろうなとも…。
暗殺こそ失敗に終わり、正面対決でも敗北したものの、ぶっちゃけ戦果としては大金星だったなとも思う。あとナックルの初変身時点でこの人死にそうと思ったし、戒斗に敗北した時点で死んだかと思ったから、しっかり最後まで生き残ったのは正直驚いた。
主任を裏切った上にミッチにブーメラン気味の説教をしていたことは気になったが、最終的には戒斗に着くと決めてから一貫し続けた湊耀子。彼女もある意味変身を遂げた人物だったのかなと思ったり、彼女のスタンスはあまり描かれなかった故にわからない部分が多いが、個人的にはプロフェッサーに流されるがままだったところを戒斗との出会いで変わったのかなと思った、恋は人を変えるというし。
心残りはあっただろうが、その生き方に悔いはなかったのかなと思ったり。
それはそうともう少し彼女については知りたかったなとも思ったり。
戒斗を止めるべくついにヘルヘイムの果実を口にする紘汰、見た目がインベスに変貌しないのが逆にもう既に人の形をしながらも人ならざる者になってしまったんだなと…。そして作中に多くあった姉ちゃんとの食事シーン、それも「俺もう、お姉ちゃんの手料理食べられないや…」ここにつなげる布石だったとは…。
しんどい…楽しく過ごした頃すらも重たくのしかかってくる…おのれ虚淵…。
2号ライダーでありながら内面に謎な部分が多かった戒斗、ついにここで彼のスタンスが明かされた。
そんな彼が求める未来は「弱者の踏みにじられない世界」
思えば強さに拘りつつも己が強者だと言っていなかったと思うし、強者は弱者を踏みにじるものとは言いつつもそれの善し悪しは口にしなかった。
そして来たるは2人の男の一騎打ち。
仮面ライダー戦国時代と銘打つに相応しいインベスを用いた軍団戦、戦国時代に欠かせない騎馬であり仮面ライダーらしさであるロックビークルを用いた戦闘、今までの戦いを辿るように切り替わっていくフォーム、アツ過ぎる。
アーマードライダー鎧武・極アームズVSロード・バロンではなく、あくまで葛葉紘汰と駆紋戒斗の総力戦なのがとてもいい…。レモンエナジーは泣いていい。
極アームズの力を使い果たし相手の剣でロード・バロンになんとか勝つのも総力戦らしく、また力をどう使うかをテーマの本作に相応しいラストだったなと思う。
そして戒斗を打ち破るも彼を受け止め、涙を流す紘汰さん…。
「泣いたっていいんだ。それが俺の弱さだとしても……拒まない。俺は……泣きながら進む!」「お前は…本当に強い…」
結局この2人はお互いを認めていたし分かり合っていた、だが戦うしか道はなかった。最期のやり取りはそんな彼らの様を強く表していたなと思う。
デェムシュと対峙した時、紘汰は戒斗と彼を同類扱いをした。しかしデェムシュはその実、戒斗の憎む力に溺れ弱者を虐げる存在であり、同類どころか真逆の存在だったと言える。
お互いを理解してはいないが共闘してきた今までと、お互いを理解した上で対立した結末と2人の関係も変わったものだなと。
劇中歌である「乱舞Escalation」、この曲は今まで極アームズの処刑用BGMという印象が強かったが、この最終決戦においてその真の姿を現した。それは葛葉紘汰と駆紋戒斗、自らの求める未来のために禁断の力に手を伸ばした2人の曲なのである。
歌ってるのが2人だとか歌詞の「俺たち」の部分で気付ける人は気付けたのだろうけど私は全く気付けませんでした!
そして先に極アームズに変身した紘汰の戦いで流れたわけだが、これは今にしてみれば後戻りできない道を紘汰が先に進んでしまったからなんだなと。
また「なすがまま人の道を外れてしまった男」と「自力で力をつかみ取った男」という部分だけを抜き取ると戒斗の方が主人公みたいだなと思ったりもしたり。
まぁ主人公みたいな奴が6人くらい居ますけどねこの作品。
そして勝者は始まりの男へ…。
急激な進化を放棄する代わりに選んだのは新天地での生態系の創造。どこまでも無茶をする人だよ葛葉紘汰という男は…だがそこが好きだ…。
進化の放棄こそは叱咤したものの、新たな創造には好意的な辺りが個人的にはサガラの憎めないところだなと思った。本当に善意で動いてるだから質が悪くもあるけども。
アダムとイブはモチーフの一つとしては絶対あるしつまりあの2人そういうことなのかなと思うがはたして。
一方で全てを失ってしまったミッチ…ザックは声をかけてくれたし、城乃内は彼を心配していたが、結局自分自身が許せず…。何者にもでもない、「本当に悪い大人」に成らなかったからこそ自分を許せないのは言うまでもない。地球外の神様になって本人の知らない場所でミッチを心配を焼く紘汰さんは、この辺りはどこまでも行っても変わらないところだなと、でも大きく変身を遂げたのもまた事実。
せめてもの救いと言わんばかりに主任が目を覚ますところで、アーマードライダー鎧武の物語は幕を閉じる。
主任絶対生きてるだろうなとは思ってたけど、それはそれとして生きてて本当によかった…。
変身!そして未来へ
次回予告でオレンジアームズが映っていて驚いたが、最後の物語は回想から始まる。
紘汰とミッチが道を違える前、この時点で確かに意識のすれ違いは起きていた、ただミッチは思うところこそあれど心から笑っていたのだった。
失ったものも大きいものの平穏な日常を取り戻した沢芽市。
あんなに日常を切り捨てて生きてきた主任が、紘汰の日常の象徴といえる姉ちゃんこと葛葉晶と弟について話し合う様はやっと全て終わったんだなと思わせるものだった。しかしヘルヘイムという災害はまだ終わっていなかった。
未知のアーマードライダーとイナゴ怪人による突然の襲撃。
戦極ドライバーはほぼ戒斗の手により破壊されてしまった中、生身のまま挑んでいく様はまさに変身できなくても仮面ライダーではある。しかしやはり力の必要性を描く鎧武、返り討ちにあってしまう…。
次回予告の時点で誰だお前は感が凄かったアーマードライダー邪武。
その正体も色んな意味で誰?となる上に登場人物にも悉くその存在を覚えてはいなかった。
しかし誰も覚えていない出来事の復讐、それはある意味人類の意思など無視した進化の促進を行おうとしたヘルヘイムの森と同じく理不尽の象徴と言えるかもしれない。パっと出でこそあるがそこを含めてこのキャラクターなのかもしれない。
そして量産型黒影のドライバーも廃棄されていたことが判明して打つ手なしかとなる中、罪滅ぼしとして1人戦おうとしていた主任、そして主任が量産型ドライバーを一つだけ持っていたことを見抜いた珍しく策士らしい城乃内。
初瀬亮二が変容するのを止めることができず処分を決定した男と初瀬亮二を見捨ててしまった男、やはり思うところがあったのだろう。主任の甘いところ見てて不安になるけど正直好きだよ。
結果こそ伴わなかったが、それでも初瀬ちゃんとの共闘を思い出し変身し、「うるさい!地獄のパティシエ修行に比べれば、このくらい!」と不利になっても気張る様はまさにヒーローだった…本当に強くなったな城乃内…。
城乃内が破れもはやこれまでかという中、龍玄のドライバーを携え現れたミッチ。
「確かにあの人はヒーローだった。でも、もう紘汰さんはいない。だから僕たちがヒーローにならなきゃいけないんだ!変身!」
独りよがりだった頃を思うと僕「たち」なのがとても感慨深い。
独りよがりだった頃を思うと僕「たち」なのがとても感慨深い。
街の人に嫌われようとアーマードライダーとして戦った紘汰、ある意味ここがミッチが袂を分かつ始まりだった。しかし今のミッチは他の皆に嫌われているかもしれなくても沢芽を守るために戦う決意をした。やっとやっと本物のヒーローに変身できたなミッチ……。
龍玄として戦い慣れているからか有利に戦いを運び、ついに邪武を追い詰める。てかブドウ龍砲が強すぎる。
だがコウガネがあくまで少女を乗っ取って居るだけだと明かし、脅しをかけたことで形勢逆転。黒かったころのミッチだったら黙っていろよとそのまま攻撃していたかもしれない。彼が沢芽を守る決意をしたと共に得た、まさに優しさ故の弱さである…。
だがこの「神様」は彼と沢芽市を見捨てなかった。聞き覚えのある「そんなことねぇよミッチ、お前すげぇ頑張ったじゃないか」という声、私は何度見てもここで感極まって泣いてしまった。
確かに迷走に迷走を重ねた悪しき道だったけどミッチはミッチなりに頑張って来た。そして今は紘汰さんと同じように、見返りも求めずに戦える力を持っているという理由だけで戦っている。誰にだって褒められるはずがなかった、でも紘汰さんは認めてくれたのだ。
そしてここで流れるのが劇中歌「乱舞Escalation」…ではなくOP曲「JUST LIVE MORE 」
「乱舞Escalation」を前話で人を超えた葛葉紘汰と駆紋戒斗の曲と印象付けた後に、OPを持ってくるのはあまりにも流れが完璧すぎる。差し詰め今を生きる沢芽市民たちの曲であり、沢芽の新たなヒーローである仮面ライダー龍玄の戦いの曲、そういう風に聞こえた。特に俯くなよ(顔を上げろ)どこまででも(曲げることなく)信じた道を行けの部分がもう紘汰さんがミッチに語り掛けてるようにしか聞こえないよねって、お前は変身できたんだからもう迷走なんてしないんだと。
元々優勢だった上に神様が強すぎる。
形勢逆転は逆転し、最後はライダーキックでの決着となった。仮面ライダーと言えばやっぱりこれですわ!
そしてやり残した戦いは終わり、紘汰の姿は薄らいでいく。
最後まで紘汰はミッチの話を聞いてくれなかった、本当にどこまでも勝手な男だよ葛葉紘汰は…でもだからこそヒーローなんだよ、大好き。
ミッチに駆け寄る城乃内に凰蓮にザック、そして兄貴虎。そして彼らに振り返るミッチの顔にあったのはあの頃のように満開の笑みだった、やっと本当の意味で災害を乗り越えられたんだなと。
しかし城乃内あの後ボロボロになりながらも皆を呼びに行ったのかな…頑張ったな…。
そして戒斗と舞の会話で物語は幕を閉じる。
人類の弱さを1人で背負い込もうとした不器用な男、駆紋戒斗。そんな彼が人類の強さを認め笑みを浮かべて去っていった、戒斗もやっと肩の荷が下りたんだなと。
でも紘汰さん今生の別れみたいな雰囲気醸し出してたけど、これからあんた何回か帰ってくることになるからな…。
それはそうと今また帰ってきた紘汰さんを見たら泣いちゃうかもしれない。
総括
「キミはこの力、どう使う?」というキャッチコピーの通り力の使い方というテーマに一貫して向かい合い、しっかり描かれた作品だったなと思う。紘汰1人とっても力を持て余していたところから始まり、力を持つ者が戦わなければと立ち上がり、力の真相を知り苦しみ、それでもこの力を使って正しい人の味方に成ると決意する。
仮面ライダーの代名詞である「変身」を「怪物への変容」「生物の進化」「精神の成長」と様々な切り口で作品に落とし込んでいたなと思う、本当に完成度が高い。特に変身を夢見ていた紘汰が、46話で主任に対して変身だよ変身と語り掛けるまでになるのは本当に身をもって変身を見せてくれたなと思う。
逆にシドと戦極凌馬はこの「変身」の逆を行く存在だったなと思う。紘汰たちに大人風を吹かせて、自らの拘りに従って死んでいった。ただそれぞれの生き方自体は子供っぽい辺り不思議な構造であるなと思う。シドは言うまでもなく「舐められたくない」と中高生の不良のようであり、戦極凌馬も「ぼくってすごいだろ?」と見せつける子供のようである。その結果シドはロシュオを情けを跳ね除け死に至り、戦極は自分の研究とは別の道で人間を超えた戒斗に机上の空論と否定された。テーマに反逆しブレない、まさにこの2人こそがこの作品の悪役だったなと思う。
序盤の日常&コメディパートがしっかり後々に繋がりつつ、それでいてダレずにそれ自体も魅せる造りになっていたなと思う。全然ヒーローらしくなくそれでいて純朴な紘汰に、一癖二癖ある登場人物たちはこれからどうなるんだろうと引き込まれた。特に凰蓮はその面白さに圧倒されましたね、冷静に見るとこいつめんどくせーってなるところも含めて。
そしてそんな中で撒かれた種が後半でしっかり芽吹いていたなと。中でも多数あった紘汰とその姉である晶の食事シーン、これら自体は普通のシーンだったのにも関わらず、最終的に重みをもってのしかかってくるのは本当に上手いしエグいなとしかいう他ない。
話の内容に構成、そして結末、登場人物のキャラクター性にライダーのデザイン、あと生身のアクションシーンの豊富さとあらゆる要素が好みで正直なんで今までこれを見なかったのかなーと思ったくらいにいい作品でした、まぁそも仮面ライダーを含めニチアサを見る習慣もなかったわけですが。
あと今抱いている感想も今だからこそ抱けたものなので今がベストタイミングだったかもなーとも、特にミッチに感情移入して見ていた節があるわけだが、この部分も私自身の人間関係リセット症候群などの悪癖がありそれ故に迷走を重ねてきたわけで、そのことを自覚したことから今の目線で観ることができたのだろうなと思う。
正直なところこの作品を見始めた時はそこまで期待していなかった。何故なら作品名は伏せるが虚淵さんが手掛けた作品でめちゃくちゃ嫌いなものがあり、実は苦手意識を抱いていたからだ。ただその作品は今作と年代も離れていることもあり、内容も主人公も真逆というよりも比べる理由がないほどに別物だったなとしか言いようがなかった。完全に食わず嫌いで視野を狭めていたのだなと今となっては後悔している。
また虚淵さんの作風は露悪的だからこそ、紘汰さんのような明るくて真っ直ぐな人を主役にしてこそ映えるのかもなとも思ったり。そして長所である真っ直ぐさは愚直であるという短所と背中合わせであり、それらが両方ともしっかり描かれていたのは本当に人間を書ける作家だからこそ出来ることだと思う。
あとこの感想文を書くこと自体についてなんですが、書いてて気になってた部分を見返せないのが案外苦痛だったので無料配信に頼った感想書きは多分よほどのことがない限らないかなと思います、やるならサブスクに頼る。ただこの仮面ライダー鎧武という作品は最初こそ軽いノリで見ましたが、そのよほどのことに当てはまる程に大好きになれた作品でした。本当にいい作品に出合えた。
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