「世界と呼ばれた一人の少女の物語」
9月25日発売のLaplacian最新作「白昼夢の青写真」の紹介です。
過去作の舞台に楽曲をアレンジしたティザームービー、容姿に共通した要素を持ちCV神代岬のヒロイン達そして春乃いろは一人芝居ドラマCDと企画発表の時点で受けた強烈なインパクトは今でも鮮明に覚えている。
体験版はそれだけでも読み物として成り立つレベルの内容だった。しかしその一方で明らかに本当の戦いはこれからだといった終わり方をした3つのシナリオに、さわりの部分しか見えなかったCASE-0、更にホームページのあらすじや企画意図の内容も回収されておらず、まだまだ全ての物語の全容は見えなかった。
多彩な3つのシナリオ
CASE-2は劇作家と女優の悲恋、眠れる獅子のサクセスストーリーと時代に抗う人々を描いた人間ドラマ。
CASE-3は夢を追う少年と学校嫌いの教育実習生の夏の思い出、爽やかな恋と自分自身の発見を描いたラブコメディ。そしておねショタ!
3つのシナリオが気になったら是非手に取っていただきたい、絶対に損はしない完成度である。CASE-1が好みが分かれる劇物ではあるけども。
過去作をやったことがないけどこの作品を楽しめるのかな?と二の足を踏んでしまっている人も居るだろうが是非安心してやって欲しい。まず過去3作の世界観を受け継いだものであるもの、CASE-2は年代すら100年ズレており、CASE1と3は同じ時間ではあるものの雰囲気は大きく異なる。そして過去作のキャラクターはほぼ登場しないと言っていいだろう、ぶっちゃけコラムでも過去作の舞台を借りただけと書かれているし。
強いて言えばCASE-3の元の舞台である未来ラジオと人工鳩についてはあの時代の設定面のみは関わってくるが、それも幕間における出雲の解説で十分である。それでも気になる点があったら公式サイトのSPECIALに掲載されている「未来ラジオと人工鳩 ビジュアルガイドブック」のキーワードと作中年表に目を通してみるくらいで十分だろう。
また先入観が無ければ番号の真意に気付けるかも...?
謎多き本丸CASE-0
本丸たるCASE-0の情報があまりにも少ないが、これは前情報がない事で記憶を失っている主人公海斗と同じ位置にプレイヤーを置く意図があると思われる。なのでこの作品に挑む上でのネタバレは普段以上の体験性を損なう可能性が高い。ここから先は公式サイトに書かれてる範囲に準ずる形での紹介を行うが、正直私としては私の文なんて読まないでまっさらな状態でCASE-0に挑んで欲しいのが本音である、でもまぁ事前情報内の怖いよねそれもわかる。
なんと驚くことにこの物語は海斗と世凪の幼少期から始まる。
少年と少女の出会い、学ぶことの大切さ、恩師との出会いと彼の夢、そして初めての死の目撃...そうして2人は成長していく。
そして時代は進み青年編、恩師との再会、新たな仲間、そしてすれ違う2人の想い... こうして海斗は夢に向かい歩みを進める。
2編を通し描かれたこの世界の在り方と世凪の秘密、そして3つのシナリオの意味を前提として物語はクライマックスへと向かっていく。そんなSF超大作であり壮大なラブストーリーである。
その一方で今までよりは大人しいがギャグのテンポのよさとキレは失われていない、某貴族とかチンチンとか車内で流れる某曲とか狂気のリープくんとか。その上でやはりシリアスさを損なわない出来である。
実用性について
以下ネタバレあり感想
CASE-3感想
お姉さん二人にいじられながらも、「本当のすもも」を褒めたり担任を言い負かしたりと男らしい面を見せてくれたカンナくんだが、彼もまた悩める少年であった。そしてそんな悩める少年のさわやかな成長譚、そんな物語だったと思う。
お別れセックスが恒例行事だと思っていたのでラストの手コキは驚いた、それはそうとめちゃ抜けた。下手にヤって行かないのは彼女なりに大人であろうとする姿であり、女としての自信の証拠であるなと思った。ただすももは男心はわかってるかもしれないが、少年の心はわかってない...。
あと車内BGMで「むきだしの愛の音」が流れだしたのはズルだった、あれママの趣味なの?それともパパの?どっちにしろやばくね?しかしよくカセットまだ残ってたものだ物持ちがいい。ついでに地味に好きな部分がOPの車のシーンでも使われた「助手席にすももが座っているCG」である。撮影場所探しはカンナが助手席に座っていたので勘のいい人は展開に気付ける要素なんですよねこれ、まぁ私は全く気づきませんでしたけど。
CASE-2感想
最初から一番期待してた章であり、体験版も一番面白かったCASE2だが、本丸のCASE0を除くと一番刺さるものであった。
過酷な環境の中だからこそ、楽しいひと時を楽しみ、皆で一致団結し成し遂げるといい意味で今までのLaplacianらしかったと思う、チンチンネタもあるし。それでいて悲恋としての美しさが半端ではない、ロミオとジュリエットの完成シーンからはもう涙が止まらなかった。オリヴィアが居てこその「劇作家ウィリア厶・シェイクスピア」なんだ。
少し残念だったのはマーロウの扱いである。作家としてはかませで小物なのは相手があのシェイクスピアな上にゴーストライターを雇っている説を採用している以上は仕方がないのだが、工作員としてもう少し活躍して欲しかった気持ちがある、オリヴィアの秘密を暴いたのもたまたまとしか言えないし。ただこの辺りはあまりにもこの章に対して期待し過ぎた故の感想だなとも思ったり。逆にエリザベス女王は出番こそ短いものの存在感を示し、CASE-0につながる要素として「女王は神ではないのだ」と権力者の限界と不自由さを言い表した。
あとキキのHシーンください。
CASE-1感想
確かにおっさんがおっさんの日記を読んでいるだけなのかもしれない。しかしこの物語には身近な人の弱さや生への恐れを綿密に描かれている、そう感じた。というかもはや綿密過ぎてもはやホラーであった。特に「どんな場所にいってもその他大勢」というのは以前から常に自分について思ってきたことなのでやはり、有島には一番感情移入してしまった。おかげでPCの前でブルブル震え続ける羽目になった。身近なことをこんな形で書けるのはまさに「人間を書けている」作家という他ない。
因みにこの時点では本当になんとなく逆順でやった。
CASE-0
各CASEの関係性
3つの並行世界が世凪の書いた物語だったことが判明した時は正直なところ拍子抜けしてしまった、思っていたより捻りがなかったなと、しかし私は掌を返す事となった。またあの世界の歴史を参考とした物語であったことでモモケンが凛ほどの美少女に目をつけなかったこと、作品の成立年代にずれがあること、そしてカンナやすももが1タミに入り浸っているのにかぐやと遭遇しなかったことにも説明がついたがその一方で少し疑問に思った事がある。ウィルリアム・シェイクスピアのロミオとジュリエットの発表やハレー彗星の到来と電波喰いの収束は歴史として残って然るべきものであるが、2016年の夢見市はこの世界において何があったのだろうか?またこの場所は海斗研の実験においても舞台として使われていたりと少しばかり扱いがいい。
身も蓋もないことをいうと素材の使い回しとプレイヤーに馴染みやすい現代舞台、そしてファンサービスなのだがあえて私の思いついた理由付けを書き記したい。それはCASE-1の舞台になったことは東条七ノ羽があの世界において歴史に名を遺す作家であったからと考える。世凪は幼少期の時点で勉強熱心な子であり、いくら有名であろうと八世紀前のイギリス文学よりは四世紀前の同じ日本の文学の方が馴染みやすいだろう。実験の舞台に使われたのはあの地下都市の母体に柊医療財団が関わっているからではなかろうか。あの地下都市は新宿ではあるが人口減少による移住であることを考えると、神奈川くらいはあの場所に統合されていてもおかしくない。またそうだとすると柊英学園出身で柊英社で出版していると思われる七ノ羽の書籍が図書館に置かれていることも自然である、ルート通りデビューしていればであるが。海斗の得たもの
幼少期の時点で学がない中で車を発明しようとし、青年期においては主席であったことが明かされ、遊馬研を再興させるに至った天才である海斗。しかし車は遊馬の助言により完成するも無惨にも破壊されてしまい、世凪のお陰でなんとか母に見せることができた。元々研究員になるだけの実力はあったが、本人は世凪のお陰で研究員になれたと認識していた。なにより「夢」はシステムこそ海斗が作り上げたが、遊馬と世凪の覚悟によって完成に至ったというべきものだったと思う。結局一人では何も成し得なかった海斗、そんな彼がたった一人で勝ち取った唯一の成果は世凪の新たな生であった。海斗は世凪なしでは生きられない男なのだと思う、だからこそ彼に与えられた才能は世凪と共に居るための才能なのだろう。
女神として再臨した世凪は考え方によっては海斗の記憶やその語りを聞いた人々の印象から生まれた「スワンプマン」のような存在なのかもしれない。しかし仮にそうだったとしても答えは作中に出ている。記憶と人格の関係性、幸せな嘘と不幸な嘘。
遊馬について
この作品最大のネタバレポイントが彼についてなんじゃないかなと思う、CASE-0のネタバレが解禁されようとTwitter等で語ってはいけないのではないかと個人的には思うくらいに。CASE-0が幼少期からしっかり描写され、CASE-3においての父親のモデルであると明言され、そして恐らくCASE-2においても父親であるジョンとエドという「導き手」で「頼りになる大人」のモデルになっているが故に深みがありあまりにも意外性のあるキャラクターに仕上がったと言えるだろう。まぁ私はカイトと遊馬という名前と組み合わせ故に某かっとビングの人を連想して全く疑わなかっただけなのですが。
また彼を怪しませないギミックとして入麻の存在も大きいだろう、幼年編には一切登場せず青年編で初登場、それも我々の見えないところで海斗と仲良くなり、何よりもCASE-2の悪役であるクリストファー・マーロウと同じ中の人である。あと女を殴りそうな髪型をしてる。
また前作の葉月いざな博士の逆位置と言える人物なのかもしれない。いざなは愛娘かぐや一人のために多数の犠牲を強いたのに対し、遊馬は多数の救済の為に世凪一人に犠牲を強いた。その一方であくまで愛する人を救う事が根っこにあり、罪悪感を感じながらも突き進んだ様はある意味同質であると思う。
そして正直なところ私は未来ラジオのかぐやルートにおけるソラのいざな博士に対する許しがちょっとモヤっとした点であった。まぁこれはあくまで主観であり私の価値観故だが、どう取り繕おうとソラから父と母を奪った仇である事には変わりはないし、自らの命についても言ってしまえばプラマイゼロであり、許しに対しての説得力を感じる事が出来なかった。まぁ行き場を失った復讐心の扱いは難しい故であるのだが。
それに対し今回の海斗の遊馬に対する「罪は許さないが恨みは捨てる」という回答はとても納得の行くものだった。
海斗と遊馬が対峙したシーンのこの真顔と海斗のあの顔が、まさにあの2人の決定的違いを表しているように感じた。
出雲について
それはそれとして案外根っこが面白い子だったのが正直驚いた。
世凪について
重いもの背負ってるのに明るく振舞う女の子っていいよね!!!こういう属性というのはストーリーをがっつり組まないと生み出せないのと語るとネタバレが故にあまり出会えないので貴重である、出会いに感謝。
正直彼女についてはメインビジュアルを見た時も体験版をやった時もイマイチ惹かれなかったが、CASE-0始まってすぐに好きになっていたし今作は彼女に泣かされたといっても過言ではないだろう。
どうでもいいけど公式サイトの世凪の説明書いたの絶対スペンサーだろ!!!
幸せなエピローグ
この作品が「伝統」から脱却出来たと感じたポイントがここだったと思う。CASE-3
師匠の元で修行を積み、夢を実現しすももと再開したカンナ。…いやそれはよかったんだけど可愛かったカンナくんを返せ!お師匠さん許せねえよ!…と思ったけど撮影モードが終わったら可愛かったので安心した。車泥棒だったのに梓姫さん真人間になってしまったね…w
CASE-2
短過ぎて驚いたが、よく考えるとほか2つが世凪の方針の都合で打ち切られたのに対して、CASE2は本編で完結している以上は妥当なのだろう。しかし誰があんな形でマーロウの「キャリア半ばの死」をあんな形で回収すると予想出来ただろうか、いや居てたまるか。あの2人どうなるんだろうネ…。CASE-1
ありがとう渡辺先生、これに尽きる。Laplacianの親友キャラに外れはないが、彼の人格者っぷりと貢献度は計り知れない、いや他の人が駄目すぎるのもあるけども。有島が編集者になったように祥子も作家に成れば案外向いてたりしないだろうか?
楽曲感想
ブルカニロ
なんというかギターって青春の音がするんですよね、少なくとも私はそう思う。始まりはキミトユメミシの真逆なほどにめちゃくちゃ暗いCASE-1だったが、この曲調が似合う程に有島は青春を取り戻せた、そんな物語を表す曲だったと思う。また変わらない日々だと悲しい目で世界を見た彼はもういない。
夜明けの片隅で
3曲の内で最も原曲に近く、それでいたゆったりとし哀愁を帯びた曲調なのがCASE2の作風を表しているように感じた。それはそうと別れの中の唄がOPで別れの後の唄がEDってえげつないな?「今瞳の奥に 色褪せないように」でオタクは死ぬ、私は死んだ。
夏のタイムカプセル
イントロの音が途切れ転調するところが、未来ラジオの中間EDの終わりを彷彿させ鳥肌が立った。OPと比べると落ち着きのある曲調ではあるが原曲よりは明るく、歌詞も夢いっぱいな感じがまさにCASE-3であり桃ノ内すももと飴井カンナだなと感じた。あとクラブで流れてそう、クラブなんて行ったことないけど。
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